相続財産の範囲とは


たとえば、被相続人が不動産の売買契約があったにもかかわらず、売主である被相続人が登記を移転する前に亡くなってしまった場合はどうなるのでしょうか。
相続人は、被相続人の義務を承継しますので、買主から被相続人が売った不動産の所有権移転登記手続きをせよという請求があれば、相続人はこれに応じなければなりません。
反対に被相続人が、売買代金をまだ受け取っていない場合には、相続人は買主に対して、代金の支払いと引き換えに登記を移転するという主張もできます。つまり、相続人は、被相続人の権利も承継するということです。このように、相続人は被相続人と同一人格であると考えられるのです。
それでは、交通事故により被相続人が即死してしまった場合はどうなるのでしょうか。
通常、交通事故によって障害を負った被害者本人、あるいは亡くなった方の遺族には慰謝料が支払われます。この慰謝料は、不法行為によって生じた損害に対する賠償で、この場合、事故によって障害あるいは死亡によって精神的な苦痛を負わせたことに対する賠償です。
もちろん亡くなった方の遺族には慰謝料請求権が発生しますが、慰謝料請求権とは精神的な苦痛に対する損害賠償請求権ですので、その人によっても程度が違ってきます。したがって、亡くなった方が慰謝料請求権を行使すうという意思表示をしたときには、慰謝料請求権は発生しますが、意思表示をしなければ精神的苦痛はなかったということになります。ところが、死に至らない交通事故であれば、慰謝料請求権が発生するのに、大きな事故で即死した場合は慰謝料請求権が発生しないというのは不合理です。そこで、現在では、即死の場合でも、死亡者自身に慰謝料の請求権を認め、それが相続人に相続されると理解されています。もっとも、相続人が亡くなった方の慰謝料請求権を相続し、さらに相続人自身の慰謝料請求権を合わせて行使したからといって、慰謝料の支払額が必ずしも多くなるとは限りません。