債務不履行とは


債務者が、正当な理由がないのに債務を履行しないことを債務不履行といいます。債務不履行が成立するためには、原則として履行がないことについて債務者に故意または過失があることが必要となります。
債務不履行には、履行遅滞と、履行不能、不完全履行があります。履行遅滞とは債務者が履行できるのに、故意または過失によって、履行期限がきても履行せず履行しないことについて正当な理由がない場合のことです。債務者が履行期に履行しない場合でも、債務者に同時履行の抗弁権があるときなどは、履行しないことについて正当な理由があるということができます。履行遅滞が、履行できるにもかかわらず履行がない場合であるのに対して、債権成立後に、債務者の故意または過失によって債務を履行することができなくなった場合を、履行不能といいます。この場合にも不能であることについて、債務者に正当な理由がないことも必要となります。
不完全履行とは、履行はあったが、それが不完全であった場合のことをいいます。一応の履行はされたが、給付された物に瑕疵があったり、履行の方法に問題がある場合が不完全履行です。この場合も履行が不完全であることについて債務者に故意か過失があること、完全な履行がなされたことについて、債務者に正当な理由がないことが必要となります。
【自然債務】
債務というのは、債務者に対して特定の給付をさせることを内容としています。
債務者が任意に給付をしない場合には、債権者は強制的に給付をさせるか、あるいは損害賠償請求をすることができますし、そのために国家権力の援助を受けることもできます。つまり、裁判所に訴え出て、勝訴判決により強制執行をして、債権の回収をはかることができます。
これが一般的な債務です。しかし、債務者が任意に給付しない場合であっても、債権者が裁判所に訴え出て強制的にその債権の回収をはかることができない債務があります。これが自然債務といわれているものです。
どのようなことかというと、たとえば銀座のクラブに行き、酔った勢いでホステスに対し「1000万円のお金をあげる」と約束した場合、後日このホステスがお客に対し、「1000万円のお金を支払え」と要求した場合にこれが認められるかということです。この場合、そのお客が自ら1000万円を支払ったときには受け取ってもかまいません。しかし、ホステスのほうからお客に対して、裁判上請求することはできないと考えられています。つまり、自然債務というのは、裁判所に訴えてもその回収を図ることはできない債務ですが、債務者が自発的に債務を弁済すれば受け取ってもよいという債務なのです。