権利についてとは


【権利の濫用】自分が持っている権利の範囲を超えて、権利の行使をすることを、権利の濫用といいます。権利の濫用は、権利があることが前提で、権利のない者が権利者であるかのように装うことは別の話になります。
権利を持っていのであれば、本来予想されている権利の行使の範囲内であれば、もちろん問題はありません。しかし、本来認められている権利の範囲を超えて、権利の行使をしようとすることがあるため、権利の濫用は禁止されているのです。
権利の濫用となるには、二つの要件が必要になります。第一に主観的要件として、権利を行使する者が相手方に対して、加害意思あるいは加害目的をもっているかという点があげられます。第二に客観的要件として、権利行使の際に、相対立する双方の必要度と損害の程度が、比較検討されます。
【権利能力】
権利能力とは、権利義務の帰属主体になりうる能力のことです。権利を有することができるだけでなく、義務の負担もしなければならず、権利能力は同時に義務能力でもあります。つまり、権利と義務の両方が存在していて、単に権利だけをもつ、または義務のみを負担するというものはありません。
この権利能力はいつから認められるのでしょうか。民法一条の三では、「私権の享有は出生に始まる」とされていて、権利能力は出生のときから認められることになります。
一方、権利能力がいつ終了するのかについては、民法八八二条で「相続は、死亡によって開始する」とだけ規定されています。民法には権利能力の直接の規定はありませんが、権利能力は出生により始まり、死亡により終了します。
いつの時点で死亡といえるのかについては、脳死などの関連などで議論されていますので、権利能力の始まりである出生について考えてみましょう。
権利能力は出生によって始まるので、まだ出生していない胎児には権利能力がないことになります。たとえば、胎児のうちに父親が死亡してしまった場合には、同じ親の子であるにも関わらず、すでに生まれている子供には相続権が発生し、生まれるまえに父親が死亡してしまった子には相続権がないということになり、公平に反します。
このような不都合なことがおきないために、民法では「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」と八八六条一項で規定されているので、胎児も相続権を有することになります。にただし、生きて生まれなければ、具体的な相続の問題は発生しません。
また、胎児であっても他人から遺言で遺贈を受けることもでき(九六五条)、母親が飲んだ薬の弊害などによって、精神や身体に支障が生じて損害を受けた場合には、「胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす」(七二一条)とされていますので、損害賠償を請求することも可能です。
このように、胎児にとって重要な法律関係については、出生前であっても生まれたものとみなされることになっているのです。
【権利の消滅】
権利をもっているからといって安心はできません。権利は、行使しない状態が一定期間継続すると、その権利が消滅してしまうことがあるのです。これを消滅時効といいます。
時効までの期間は、債務であれば原則として10年というようにきめられています。これに対して、取得時効というものもあり、これは他人の物や不動産を、所有者として一定期間専有すると、所有権を取得できるというものです。
取得時効は、占有を開始したときに、その物や不動産が自己の物であると信じ、かつ信じることにつき過失がなかった場合には10年となります。
自分の物と思って信じたことに過失がある場合や、自分の物でないことがわかって占有を始めた場合には、取得時効の期間は20年になります。
このように所有権は自ら権利を行使しなくても、消滅時効にかかることはありませんが、他人がこれを占有することによって取得時効が完成してしまうと、所有権が奪われることがあります。
時効の効果を発生させる場合には、一定期間が継続するだけでは足りず、当事者が時効の援用をする必要があります。時効の援用とは、自分が時効完成の利益を受けるという意思表示です。そして、時効の援用をすることによって、その権利は時効の起算日にさかのぼって効果が発生します。
つまり、10年間他人の土地を占有している者が、占有の始めに善意無過失であれば、10年前にさかのぼって、その不動産の所得権を取得できるということになります。
このように、権利を行使しないでいたために、消滅時効により権利を失ったり、奪われたりすることがあるのです。時効の完成を阻止するためには、時効の中断をすることが必要になります。その方法は、時効の完成によって不利益を受ける者が相手方に対して、裁判上の請求をしたり、差押えや仮差押えなどの手続きをしたり、あるいは裁判外であっても、催告をし、6ヵ月以内に裁判上の請求をするなどをします。また、時効により利益を受ける者が相手方の権利の存在を承認することでも時効は中断します。