虚偽表示とは


虚偽表示とは、通謀虚偽表示ともおいわれ、相手方と通じて行う真意でない意思表示のことです。
たとえば、Aさんが債務者からの追求を逃れるために、Aさん名義の不動産を、Bさんに頼み、本当は譲渡するつもりがないのにBさん名義に移してしまうような場合などです。AさんとBさんがグルになって財産隠しをするわけですが、実際には売買していませんから、売買の効力が発生することはありません。もしも、Bさんが登記は自分名義になっているから、この不動産は自分のものだといっても、これに対してAさんは、この不動産の本当の持ち主は自分であると主張することができます。
ところが、このBさんが第三者であるCさんに売却してしまった場合には、複雑になってしまいます。本来Bさんの所有ではないのですから、Bさんから買ったとしても、Cさんは不動産の所得権を取得することはできないはずです。しかし、Cさんは、何の事情も知らずにBさんの名義になっている不動産の登記を信頼して取引をしていたのであれば、法律はこのCさんを保護し、Cさんがこの不動産の所有権を取得できることになっています。
つまり、Aさんには、Bさん名義の虚偽の登記をした責任があり、これを信じた人に対して責任を負わなければなりません。Aさんの利益とCさんの利益のどちらを保護するかということになると、善意の第三者であるCさんを保護すべきである、ということになります。善意とは善悪の善という意味ではなく、事情を知らないという意味です。
【意思表示の取り消し】
詐欺というのは、人をだまして錯誤に陥らせる行為のことです。そして、錯誤に陥った者がした意思表示は取消すことが可能となります(九六条一項)。取消すことができるといっても、意思表示の無効のようにはじめから効力がないわけではなく、取消して初めてその効力はなくなります。取り消さなければ、そのまま効力は残ります。ただし、善意の第三者に対しては、詐欺による意思表示の取消しはできません(九六条三項)。
たとえば、Dさんという土地の所有者がいました。このDさんをEさんが騙して、土地を購入した場合、Dさんが騙されたことに気づいて、Eさんに対して詐欺を理由に取り消しの申立てをしたとします。しかし、何の事情も知らないFさんが、すでにEさんからその不動産を取得していた場合には、Dさんによる意思表示の取消しの効力は、善意の第三者であるFさんには及びませんので、Dさんはその不動産を取り戻すことができません。
【表見代理人】
代理人としての行為をするには、本人から委任状をもらうなどして、代理権を与えられていなければなりません。
たとえば、不動産を売る代理権を与えられてはじめて代理人として、相手方である買主との間で交渉することができるようになります。
そして、この代理人が売買契約を締結することによって、その効果は代理権を与えた本人に帰属します。つまり、本人と買主との間で売買契約が成立することになります。
この場合、代理人は本人の代理人であることを明らかにしたうえで代理行為をしなければ、本人と相手方との間に法律効果は生じません。
代理人が本人から代理権を与えられていないのにも関わらず、代理人として代理行為をしてしまうことを無権代理といいます。この場合、もちろん本人に法律効果は及びません。ところが、代理権を与えていなくても本人とその代理人との間に緊密な関係がある場合には、本人に法的効果を帰属させて、相手方を保護する必要があります。相手方が代理権を与えられた代理人と思いこんでしまう可能性が高いからです。これを、表見代理人といいます。表見代理には、以下の3つの場合が考えられます。
(1)代理権を与えていないにもかかわらず、本人が他人に代理権を与えたという表示をした場合
(2)代理人が与えられた権限を超えて代理行為をしてしまった場合
(3)かつて代理権を授与されたことのある人が、その代理権がすでに消滅してしまったにもかかわらず、相手方との間で代理行為をした場合
これらの場合に、相手方がその代理人に代理権があると信じる正当な理由がある場合には、代理人の行為は表見代理人とされ、本人が行為をしたのと同じことになります。
つまり、本人と相手方のどちらを保護するかということになると、本人側に責任がある以上は、正当な理由のある相手方を保護することになります。ですから、相手方が代理権のないことを知っていたり、確認をしなかった場合には、相手方を保護する必要はないとされますので、表見代理人は成立しません。